木下こう『体温と雨』

一度絶版したものの、愛を持って、私家版として再販された、木下こうさんの歌集です。


月光は踏むとしずかな音をたてひかりはじめるふしぎなひかり

てのひらに掬へば零れゆくばかり水もま水のやうなる日々も

手と手には体温と雨 往来にさみしくひかるいくつかの傘


ささやかで、清らかな光、水などのモチーフと、しっとりとした質感が、文語やひらがなの柔らかさと呼応します。
小さな音、小さな光、わずかな変化を、慈しみを持って拾いあげる。薄暗い中で、一筋の希望を見つけ出すような感動があります。


春泥をあなたが踏むとあなたから遠くの水があふれだします

ママ、ママとまちがへながら吾に来し子は春に降る雨の目をして

ひるひなか、からつぽなだけのわたくしにくいひるやうに白梅咲けり

いやだいやだ錠をかけても夜がくる 月が笑へりそのわらひやう


幻視や、空想に見える描写もあるけれど、肌に触れるような生々しさもあって、何かに例えるという論理より、まず先に描かれた情景の柔らかさや、神秘性に心を動かされます。


たくさんのがらくたたちがひかりだしそのはしつこが夜明けのやうで


不安や悲しみを感じるような情景も、何かを否定する。というよりは、森羅万象の日陰の部分に触れただけ、というような大きなスケールを感じました。
雑多ながらくたにも、光を見出す、静かで、愛情に溢れた一冊。(よ)

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