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高野公彦『短歌日記2015 無縫の海』
¥2,200
--- ◆短歌日記シリーズの第7弾! 見ることのありて触れたることのなき虹、さるをがせ、白き耳たぶ (2015.05.27) 2015年にふらんす堂のホームページにて短歌日記の連載が一冊に。 ◆結果として無事に満尾できたのは、病気をしないで一年を過ごせたからであろう。天がこの老体にほどほどの健康を恵んでくれたことに感謝したい。友人知人から、短歌日記見ましたよ、と言われることも時々あったりして、しんどいけれど楽しい仕事であった。 (あとがきより) (ふらんす堂)
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横山未来子『短歌日記2014 午後の蝶』
¥2,200
--- ◆横山未来子の365日 2014年3月14日 桜並木は、まだ灰色にみえる。人々も立ち止まることがない。 永遠の午後あるごとく橋脚に水面のあかりまつはりてをり ◆丁寧に物を見、感じること 三六五枚のまっしろな画用紙を前にして何を描こうかと考えるような、わくわくする気持ちの方が強かったように思います。 「短歌日記」のおかげで、いつもより丁寧に物を見、感じることができた一年だったと思います。 (あとがきより) (ふらんす堂)
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坂井修一『短歌日記2013 亀のピカソ』
¥2,200
SOLD OUT
--- ◆第7回小野市詩歌文学賞受賞! ◆短歌日記シリーズの第五弾! 水槽の亀のピカソがその主の進歩史観をしづかに笑ふ (2013.01.29) 2013年にふらんす堂のホームページにて短歌日記の連載が一冊に。 ◆これまでの歌集とは違って、いささか猥雑な私、奔放な私を歌うのに躊躇を欠いたところもある。本や音楽、絵画や映画の好みもあからさまに出し過ぎたかもしれない。それでも、この歌集にはこれまでとは違う愛着が湧くのを禁じえない。 (あとがきより) (ふらんす堂)
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永田淳『短歌日記2011 湖をさがす』(うみをさがす)
¥2,200
--- ◆2011年にふらんす堂のホームページにて短歌日記の連載が一冊に。 永田淳の365日。 ◆何かを言おうとしなくていいのだ そしてまた湖をさがしにゆくだろうこくりと骨を鳴らしてのちに 私にとっての「湖」とは琵琶湖、そしてそれに連なる数個の内湖のことに他ならない。私の住む洛北岩倉から琵琶湖へは、車で三十分も走れば着いてしまう。山を越えれば、すぐそこに圧倒的な水の塊が在るという安心感は、大きい。琵琶湖は量感があって謐かで、そして昏い。そうした水の質量が背後に、あるいは傍に常に存在するということが、どこかで自らの成立ちや歌作りの根っこになっているようにも思っている。 (あとがきより) (ふらんす堂)
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岡井隆『短歌日記2010 静かな生活』
¥2,200
--- ◆短歌日記シリーズの第二弾! うつくしい岸辺へ流れつきたいと幾日も櫓をこいだおろかさ 2010年にふらんす堂のホームページにて短歌日記の連載が一冊に。 岡井隆の365日。 ◆これはわたしにとっても新しい試行だった。 わたしは、2009年の末に、この依頼をうけてひそかに心たかぶつたのを覚えてゐる。日付けのある歌を書くのは今までも経験しなかったわけではないが、今度は一日一首で勝負するのである。それを一年間持続しなければならないのである。 (ふらんす堂)
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東直子『短歌日記2007 十階』
¥2,200
--- ◆短歌日記2007 記憶とは伝えておきたい願い ◆天上のこども来たりて散る如く紙いっぱいに押す認印 日々起こるエピソード、交わした会話、揺れ動く気持ち、眠るまでずっと考えていたこと。強くこころを支配していたものも、いつのまにか記憶から消えていく。 何かを考える、ということは、現在のことを考え、過去を思い出し、末来を夢想するということ。 丘の上の建物の十階に住み、毎日上り下りしながら季節を肌で感じていた一年。 (あとがきより) (ふらんす堂)
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大口玲子『ザベリオ』
¥2,860
--- 角川短歌賞を始め、現代歌人協会賞、若山牧水賞など数々の賞を受賞してきた作者の第六歌集。 断念や諦めの末に人は祈るのだろうか。 一首にすると祈りは姿を顕すのだろうか。 自身の、息子の、そして一人ひとりのはかない願いを大口は、 丹念に掬いとって表現していく。 言葉がどんどん無化されていく時代にあって、 信念に裏打ちされた「ことば」だけがつよく響く。・・・「帯」より 小野市詩歌文学賞 (青磁社)
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『現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号』
¥1,100
ハンディサイズのかっこいいデザイン。中を開けば、今をときめく歌人の歌がずらり! 読みやすく買いやすい一冊で、短歌の読み初めにもピッタリ。 軽やかに短歌の世界へ飛び込もう! --- 新シリーズ創刊! 最注目の歌人10名による書き下ろしの新作短歌アンソロジー歌集。 榊原紘/伊藤紺/千種創一/柴田葵/堂園昌彦/ 谷川電話/吉田恭大/菊竹胡乃美/宇都宮敦/初谷むい 【収録作品】 榊原紘「Classic」 伊藤紺「雪の匂い」 千種創一「White Train」 柴田葵「おさしみ」 堂園昌彦「春は水さえとろけさせる」 谷川電話「夢を縫う、たき火を保つ」 吉田恭大「フェイルセーフ」 菊竹胡乃美「火のぬいぐるみ」 宇都宮敦「羊毛期の到来(ウール、ウール、ウール)」 初谷むい「天国紀行」 (書肆侃侃房)
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林宏匡『ニムオロのうた』
¥880
--- 生後間もなく樺太に渡り、終戦を樺太庁真岡町で迎えた著者。長じて父と同じ医の道を歩み、34歳からの5年間、根室で僻地医療に従事する。この時期を含む10年間の清冽な抒情を第一歌集文庫にて復刊。 「この歌集が刊行されてから既に四十五年。けれども、今もなお世界に争いは絶えない。ニムオロは根室に、真岡はホルムスクに、キエフはキーウへと名前が変った。そうした観点に立って考えれば、ここに詠まれている様々なできごとは私たちの今に直接つながっている。作者個人の人生を超えた時代のうねりや国と国との争いが、この歌集にも確実に影を落としているのである。」 松村正直(文庫版解説より) 釣り上げし氷下魚も凍る海風に背を向けつつ釣り続けをり 助教授の職を辞退しはや三年僻地に貧しき医療つづくる 激浪を呑みつ吐きつ泳ぎたる漁夫の屍(しかばね)浮腫(むくみ)剝げたる 龍胆の花咲く丘ゆ見はるかす青き国後還らざる島 ソビエト戦車の軀幹にチェコ人民鍵十字をば書きて罵る (現代短歌社)
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永田和宏『メビウスの地平』
¥880
SOLD OUT
--- 流通の具合から見ても、注目のされ方から見ても、結果的には小出版社からのアングラ的な歌集出版は、歌集の出自としては不利だったのだろうが、ある意味、凝りに凝った、若さの自負と気負いの詰まった第一歌集を眺めるとき、これはこれでなかなかいい出発をしたと思っているのである。(永田和宏「文庫版へのあとがき」より) きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり 背を抱けば四肢かろうじて耐えているなだれおつるを紅葉と呼べり てのひらの傷に沁む塩 はじまらずおわりしものを愛とは呼ぶな (現代短歌社)
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長瀬元久『百通り』
¥2,970
--- 百人の生まれ出づれば百通り生き方のあり逝き方がある 第10回筑紫歌壇賞受賞作家の第2歌集。帯・伊藤一彦。 (本阿弥書店)
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井上久美子『マザーリーフ』
¥2,860
--- 第一歌集・かりん叢書 (ふらんす堂)
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小島なお『乱反射』
¥1,540
SOLD OUT
−−− 現代短歌クラシックス12 何ひとつ知りすぎたことないままにわれは二十歳になってしまいぬ 現代短歌新人賞と駿河梅花文学賞をW受賞し、映画化もされた小島なおの第一歌集が新装復刊。 【収録歌より】 こころとは脳の内部にあるという倫理の先生の目の奥の空 もう二度とこんなに多くのダンボールを切ることはない最後の文化祭 講堂で賛美歌うたう友達のピアスの穴を後ろから見る 噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし なにもないこともないけどなにもない或る水彩画のような一日 【著者プロフィール】 小島なお(こじま・なお) 1986年、東京生まれ。青山学院高等部在学中に短歌を作り始める。2004年、角川短歌賞受賞。歌集に『乱反射』(現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞)、『サリンジャーは死んでしまった』、『展開図』。千葉聡との共著『短歌部、ただいま部員募集中!』(岩波書店)。日本女子大学講師。信濃毎日新聞歌壇選者。 (書肆侃侃房)
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大塚寅彦『ハビタブルゾーン』
¥2,200
−−− 現代歌人シリーズ36 卵白はかたまりやすき泪とも零れし卓に朝陽さやけし 病をえた人とともに過ごした日々 濃密な時間は歌に溶け出し 風や水となって胸内に沁みる 哀傷のプリズム 【収録歌より】 車椅子の君どこまでも押しゆかむ死も患ひも振り切るまでに 空見ればおほき虚なり花咲けば色むなしきよ君在らぬ世は 他界よりメール来る夜やいつかある氷の転ぶがの着信音に 「だつて君は死んでゐるだろ」夢に見し面に言ひきふいの目覚めは たましひは苦に歪みつつ終に吐く真珠と思はむ月かげの澄む 【著者プロフィール】 大塚寅彦(おおつか・とらひこ) 1961 年5月17日、愛知県生まれ。 1980 年中部短歌会入会、春日井建に師事。1985 年『刺青天使』以降歌集5冊を上梓。 中部短歌会「短歌」編集発行人。中部短歌叢書第309篇。 (書肆侃侃房)
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吉川宏志『雪の偶然』
¥2,970
--- 著者第九歌集。 修辞は、想像力は、ここまで磨きぬかれた。 世界の惨を、歌い尽くすために。 言葉は、ついに、無力だった、と証すために。 言葉より狂いはじめし世にありて紅葉は何の内臓ならむ 慰安所の扉に続く列がある 水溜まりを避けて途切れたる列 幼な子が見しものは絵に残されて踊るごとし銃に撃たれたる人 銃床に使われるというクルミの木 枝をくぐりて雪は降り来る 匙もつ手 鱈をさばく手 ウラジーミル・プーチンと書き紙を折りし手 (現代短歌社)
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土井礼一郎『義弟全史』
¥1,980
SOLD OUT
--- 2019年、第37回現代短歌評論賞受賞の土井礼一郎による第一歌集。 義弟とはだれなのだろうか。ひとつ奇妙な歌がある。謎解きとしか思えない。 〈弟と義弟がともにいる部屋でわたしは義弟の名前を忘却した。義弟とは何者であるか〉 これがロゼッタの石と気がついた。 ――平井弘・栞より 現実を解体し、謎めいた箱庭世界で暴力や崩壊の予感を光らせる。 ――大森静佳・栞より 装幀=花山周子 【著者プロフィール】 土井礼一郎(どい・れいいちろう) 1987年茨城県出身。東京都在住。 筑波大学大学院美術史領域修了。 歌人集団かばんの会 所属。 2019年、現代短歌評論賞受賞。 東京新聞・中日新聞コラム「土井礼一郎の短歌の小窓」ほか、 短歌評論を中心に執筆活動中。 (短歌研究社)
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【サイン本】菊竹胡乃美『心は胸のふくらみの中』
¥1,650
淡々とした描写が、感情に寄り添うというよりは、点景のように遠く寂しく映る。けれど、不条理な世界の中で、あっさりと描かれた世界はどこか清々しく、広く尊くも感じた。平易で、軽い冗談を言うようなユーモアには、奥から哀しさが滲んでいて、作り笑いをしているようにも見える。そのような本心すら封殺されてしまう世界を恐ろしく感じるけれど、その中でも懸命に、強く生きる作者をとても愛おしく、美しく思う。(よ) −−− トロの吐露リスのリスクたわしのわたし掬ってほしい救ってほしい 涙、傷、痛み、女の身体をもつこと。今生きていること全部載せ。 正直でラフでせつなくて、作者を好きになってしまう。 ────飯田有子(歌人) 日常のたしかな憤りとときどきの喜びが、 「わたし」の人生を祝福するように歌われていました。 ────和田彩花(アイドル) 【収録歌より】 おんなというもの野放しにして生きるには多すぎる爆撃機 愛はお金お金は愛じゃないけれど津波のようなパトロンが欲しい 素敵なことと思う友達の妊娠は知らない国の夜明けみたいな 冷や麦をゆでる八月平和とはわたしでいること家系図途絶えて iPS細胞は元気にやってるのかなあこっちは元気よマヨネーズ山盛り 女の子を好きなぼくに好きだと言う男の子をなでるぼくの手のひら 賃金のすくなさ自転車を漕ぐちから肉まんふたつ分のおっぱい 独身のからだでどこまで行けるだろうずっと遠洋の漁船の灯り (書肆侃侃房)
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【サイン本】『仁尾智猫短歌集 いまから猫のはなしをします』
¥1,870
猫歌人・仁尾智さん待望の第一歌集! 猫を見つめる眼差しが優しくて、愛とはこういう視線のことをいうのかと。 --- 57577のリズムに乗せて、猫の愛しさ、やるせなさ、 そして切なさを詠みこんだ短歌集。 猫たちとの日々の中で、生まれてきた短歌の中から厳選した作品を 五十音順に並べて掲載。 著者と時を過ごす(過ごした)猫たちのエピソードを写真とともに綴った コラムエッセイも収録。 いい人と思われそうでも まあいいや いまから猫のはなしをします なぜ猫を愛するように人間を愛せないのかよくわからない 幸せは前借りでありその猫を看取ってやっと返済できる (出版社紹介文より)
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池松 舞『野球短歌 さっきまでセ界が全滅したことを私はぜんぜん知らなかった』
¥1,760
行き場のない、ほとばしる想いが行き着いた先が、短歌だったのかもしれない。 そうして生まれた、野球だけを詠った短歌、313首。 読み進めていくうちに、気づけば目頭が熱くなっている、かも。 −−− 2022年の阪神戦を軸に、野球を愛する苦しさと幸せを短歌に詠み続けた、全313首を収録。巻末には、いち早くこの連作を見出した詩人の斉藤倫さんによる寄稿「セ界は世界に先立って」を収録しました。 残塁の数を数えて甲子園きみは十二でぼくは九つ 打ててれば勝ってる試合が十はあり打ってないから十は負けてる 初めての感情だなこれオレンジのチームから早く疫病よ去れ 阪神のホームは今日も遠すぎてどこにも帰れぬ私みたいで (ナナロク社)
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我妻俊樹『カメラは光ることをやめて触った』
¥2,090
我妻俊樹さん『カメラは光ることをやめて触った』。待望の歌集です。 みじかくてさびしい映画だったけど本当のバスに人が乗ってた 夜がかえってくる 割れた窓ガラス抱きしめ、空気の味がする 雨に乱れた髪からきみが見上げれば西国分寺駅は虹をくぐる 意図的な捻れの中に、現実と想像が織り込まれているけれど、シュールでもファンタジーでもなく、時に美しく、時に物悲しく、抒情と確かな手触りに溢れています。 飛行機がきみのゆびさす光点にかさなる 名前をおぼえたように 切手の中の町だから建物も路も四角いくせにバスが来ないの さようなら二月の赤い国で見たマフラーからもよろしくって つぶれた空き缶に息を吹き込んで好きな世界に戻せるつもり 作者の意図や意味を読み解くよりは、ただただ、目の前の光景や出来事を見つめてしまうのだけれど、その先が見たくなって、どんどんと中に引き込まれてしまう。人、物、時間、空間、殆んどのものが解放された世界の中で、点々と光る星に触れるような、唯一無二の読後感があるように思います。怒涛の686首!(よ) --- 夏の井戸(それから彼と彼女にはしあわせな日はあまりなかった) 我妻俊樹の短歌を初めて集成する待望の第一歌集。 誌上歌集「足の踏み場、象の墓場」から現在までの歌を含んだ唯一無二の686首。 わたしがポストニューウェーブ世代でもっとも影響を受けた歌人は我妻俊樹だ。 この歌集を前にして、可能な限り無力な読者として存在してみたかった、と思った。 ──────瀬戸夏子 心がないものにこそ心があると思うから、こういう歌だけを信じられる。 我妻さんの歌は、無数の蛍が放たれた小さな暗がりのようで、一首の歌がいくつもの呼吸をしている。 ──────平岡直子 【収録歌より】 名刺だよ 髪の毛を切って渡すと私のことに気づいてくれる 秋が済んだら押すボタン ポケットの中で押しっぱなしの静かな神社 渦巻きは一つ一つが薔薇なのに吸い込まれるのはいちどだけ ガムを噛む私にガムの立場からできるのは味が薄れてゆくこと 橋が川にあらわれるリズム 友達のしている恋の中の喫茶店 【著者プロフィール】 我妻俊樹(あがつま・としき) 1968年神奈川県生まれ。2002年頃より短歌をはじめる。2003年から4年連続で歌葉新人賞候補。2008年、同人誌「風通し」に参加。平岡直子とネットプリント「ウマとヒマワリ」を不定期発行。2016年、同人誌「率」10号誌上歌集として「足の踏み場、象の墓場」発表。2005年に「歌舞伎」で第3回ビーケーワン怪談大賞を受賞し、怪談作家としても活動する。著書に『奇談百物語 蠢記』、〈奇々耳草紙〉シリーズ、〈忌印恐怖譚〉シリーズ(いずれも竹書房文庫)など。その他共著に『kaze no tanbun 特別ではない一日』『同 移動図書館の子供たち』(柏書房)、『平成怪奇小説傑作集2』(創元推理文庫)、『ショートショートの宝箱』(光文社文庫)、『てのひら怪談』(ポプラ文庫)など。 (書肆侃侃房)
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川上まなみ『日々に木々ときどき風が吹いてきて』
¥2,200
--- うたは風を奏でる、あなたが世界を諦めてしまわないように。 第9回現代短歌社賞次席の著者の第一歌集。 栞=大森静佳・大松達知・黒瀬珂瀾 出勤の車の中で泣くような春になっても春は好きだな
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穂村弘『水中翼船炎上中』
¥2,530
短歌の裾野を広げ続ける、トップランナーが放つ最新歌集! --- 当代きっての人気歌人として短歌の魅力を若い世代に広めるとともに、エッセイ、評論、翻訳、絵本など幅広い分野で活躍する著者が、2001年刊行の第三歌集(『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』)以来、実に17年ぶりに世に送り出す最新歌集。短歌研究賞を受賞した連作「楽しい一日」ほか、昭和から現在へと大きく変容していく世界を独自の言語感覚でとらえた魅力の一冊! (出版社紹介文より)
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安田茜『結晶質』
¥2,200
話題の安田茜さんの第一歌集『結晶質』。 雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること 朝の陽にまみれて鴉うつくしいものには身も蓋もないのだから ろうそくが部屋に灯っていることが一夜わたしの要塞になる 壮大なモチーフを用いながら描かれる描写は澄んでいて、透徹した目線を感じます。気高くも、どこか儚く、美しい。正に結晶のよう。 まよなかの椅子はことさら硬くなる暗闇に目が慣れてくるまで 点火するようにひとさし指で押す列をはみ出た詩集のひとつ あなたごときに汚されるわけない夜の月を割るならきっぱり縦に ごめんねのかたちに口をうごかせば声もつづいて秋の食卓 些細な描写や繊細な心象も生々しくなく、静かで澄んだ形で歌われており、清らかな気持ちになります。 あかるさと暗さは同居しうるのであらしの晩にまた会いましょう 髪のながいおとこのひとにあこがれて私も髪をのばしています 澄んだ水のとなりに蛍石を置いてその正面で髪をむすんだ 石英を朝のひかりがつらぬいていまかなしみがありふれてゆく 悲しみ、喜び、決意、様々な感情が穏やかに、一貫して歌われる様は美しく、また、強い芯に励まされるような気持ちにもなりました。(よ) --- 雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること 第4回笹井宏之賞神野紗希賞受賞の著者による第一歌集。 安田さんの歌には、「それでも」言葉を信じて光のほうを向き直す、高潔な魂が震えている。 ──────神野紗希(栞文より) ゆめでも現実でもなく、さらには妄想でも幻想でもない不思議な空間がくりかえし創り出される一冊のなかで、怒りの感情はとくに激しい。激しく強くかっこいい。 ──────江戸雪(栞文より) 安田さんの歌の持つ抽象的で硬質な詩情は日々の暮らしの中から生まれており、そしてまた日々の暮らしに浸されるとき、律動を持ち人々を癒やす、そういう種類のものなのだと思う。 ──────堂園昌彦(栞文より) 【収録歌より】 冬にしてきみのすべてに触れ得ないこともうれしく手ですくう水 髪に闇なじませながら泣きながら薔薇ばらばらにする夜半がある 戴冠の日も風の日もおもうのは遠くのことや白さについて 死者にくちなし生者に語ることばなしあなたに降りそそぐ雪もなし 石英を朝のひかりがつらぬいていまかなしみがありふれてゆく 【栞】 神野紗希「遠くを、信じる」 江戸雪「アンビバレントパワー」 堂園昌彦「暮らしの中から生まれた結晶」 【著者プロフィール】 安田茜(やすだ・あかね) 1994年、京都府生まれ。「立命短歌」「京大短歌」「塔」出身。現在は「西瓜」所属。2016年、第6回塔新人賞。2022年、第4回笹井宏之賞神野紗希賞。 (書肆侃侃房)
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菅原百合絵『たましひの薄衣』
¥2,200
--- ほぐれつつ咲く水中花――ゆつくりと死をひらきゆく水の手の見ゆ 満を持して刊行される、菅原百合絵待望の第一歌集。 人間が荒れ狂う今世紀にこのような美しい歌集が生まれたことをことほぎたい。 ────水原紫苑 静謐で深い歌の探求が続けられていたことに胸を打たれる。 ────野崎歓 【収録歌より】 ネロ帝の若き晩年を思ふとき孤独とは火の燃えつくす芯 たましひのまとふ薄衣(うすぎぬ)ほの白し天を舞ふときはつかたなびく 水差し(カラフ)より水注(つ)ぐ刹那なだれゆくたましひたちの歓びを見き 一生は長き風葬 夕光(ゆふかげ)を曳きてあかるき樹下帰りきぬ 「わたしの夫(モン・マリ)」と呼ぶときはつか胸に満つる木々みな芽ぐむ森のしづけさ 【著者プロフィール】 菅原百合絵(すがわら・ゆりえ) 1990年生まれ。東京出身。「東京大学本郷短歌会」「パリ短歌クラブ」元会員(現在いずれも解散)。「心の花」会員。パリ・シテ大学(旧パリ第七大学)博士課程修了。専門は18世紀フランス文学。 (書肆侃侃房)
書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」一挙アップ!