
工藤玲音『水中で口笛』
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工藤玲音さん『水中で口笛』。エッセイ、俳句、短歌、ウェブや雑誌での連載など、ご活躍の工藤さんの第1歌集です。
16才から26才までの歌を満遍なく収録、との事からか、
水中で口笛
夜の海
コスモス
すもも齧る
光源
ひらかれる
休符
氷柱
啄木を殴りたい日
など、40近いタイトルで、細かくより抜かれているのも特徴的かと思います。
水中では懺悔も口笛もあぶく やまめのようにきみはふりむく
噛めるひかり啜れるひかり飲めるひかり祈りのように盛岡冷麵
無言でもいいよ、ずっと 東北に休符のような雪ふりつもる
工藤さんの作品にエッセイや連載から入ると、明るくて、前向きな印象を持つ方が多いかと思います。(『わたしを空腹にしないほうがいい』は、大変なロングセラーで、何ならジャケ買いする人もすごく多い本であった…)そして、口笛、冷麺、すもも、などなど、ほんわかと感じるワードも多いように一見みえるのですが、やまめのように、と、例える仕草、ひかり、の質や角度を変えて時間軸をコマ撮りのように描写していく手つき、北の地に降りつもる雪を記号に変換する大きな視点など、むしろ、スタンスはオーセンティックかつ直球に短詩系だ…!と感じさせる力強さや、骨格、技術に満ちているように感じます。
あこがれは棒を使って掴み取れ自撮りに星は写り込まない
青春にへんな音する砂利がありその砂利を踏むわざと、いつでも
盛岡市渋民出身にして「石川啄木に対する腕相撲のつもりで編んだ歌集は、最終的には彼へのハイタッチのような歌集になった気がします。」(あとがきより)との事。
(啄木に腕相撲を挑んで更にハイタッチをできる人、かなり限られる気がします…!)
素敵な装幀につられて、あ、かわいい、と気軽に入ると、啄木に挑む筋力でケガをしそうな気配すらあり…さくさく読みつつも、細かな気づき、手触り、展開を、じっくり噛んで味わえる歌集なのだと思います。
目に入るわ口に入るわ改札が自動で開く街の桜は
生きるとは湯気立てること深くふかく菜箸を鍋底に突き立て
ふしあわせが好きなくせにと言えぬままチーズケーキを鈍角にする
柔らかな中に、はっとするような事もあり、滋味もあり。多方面で活躍する工藤さんの一面が、また1つ開けられた事を嬉しく思います!
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