櫻井朋子『ねむりたりない』
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櫻井朋子さん『ねむりたりない』
お茶筒がふすりと閉まる瞬間もいつか死ぬって信じきれない
迷いなく友より恋を選ぶだろうあの子は夜空のように笑って
あの女も使ったかなぁ出汁巻のうずに差し込む基礎体温計
生死、自意識、葛藤、生々しい感触で、心の内が描かれています。人はいつか死ぬ。お茶筒がピタリと収まるように、設計されたものだけれど、どこか信じきれない自信を見つめている。迷わず友情より恋を選ぶ人を、清々しいようで、どこか闇の中にいるように見てしまう。
雪灯り 母はシンクに熱湯を糸より細く垂らし続ける
十四年目の経血もとめどなく梅雨の港の暗さを思う
つま先を閉じてぽちんとエナメルの靴を鳴らせば残業の花
細やかな心理描写もさることながら、繊細で、寂しげな情景も魅力的で、心象に厚みを与え、響き合います。
親指でスマホの通知なにもかも上に流してねむりたりない
だといいね 何に相槌したのかを訊き返せずにそれも春宵
枯れるのも咲くのも花の意志ならばわたしの体はだれの福音
強制的に与えられるものもあれば、それを無意識に受け入れてしまう自分も、分かっていながら無視してしまう自分も、その自身を肯定する自分も否定する自分もいる。細やかな心境と日々を、美しい筆跡で描いた歌集です。(よ)
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新鋭短歌シリーズ57
『ねむりたりない』
櫻井朋子
監修:東 直子
幻の心臓が鳴りやまない
燃えやすくて凍りやすい感情に居場所を与える。
今ここに生きるために。未来を確かめるために。
(東 直子)
【5首】
母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町
くるぶしは小さな果実 夕闇に熟れゆくきみを起こせずにいる
あの女も使ったかなぁ出汁巻のうずに差し込む基礎体温計
一歩ずつ脱ぎ捨てていくサンダルのごときクリップ海に焦がれて
枯れるのも咲くのも花の意志ならばわたしの体はだれの福音
【著者プロフィール】
櫻井朋子(さくらい・ともこ)
1992年生まれ。
2017年、新聞歌壇に投稿を始める。
同年、東京歌壇(東京新聞・東直子選歌欄)年間賞。
著者について
1992年生まれ。
2017年、新聞歌壇に投稿を始める。
同年、東京歌壇(東京新聞・東直子選歌欄)年間賞。
発行所:書肆侃侃房
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