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島楓果『すべてのものは優しさをもつ』

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島楓果さん『すべてのものは優しさをもつ』
質感のある紙に箔押しのカバー。柔らかくも繊細な装丁です。

まばたきの音はわたしの始まりの音であり終わりの音でもある

髪の毛が顔ににかかってかゆいので鏡を見たらなにもなかった

フリーズドライのいちごを口の中で限りなくいちごに近づける

身の回り、というよりは、身体や視界をなでるように、そっと描写する歌が特徴的。

扇風機つけてゆっくりまぶた閉じればただ風の吹く闇がある

何もないところでつまずいたことに気づいているのはこの地面だけ

あったって無くたって特別変わらない一日を動く心臓

触れられるような近距離のものが、すごく近くから点景のようにぽつぽつと、淡々と語られていく、激情もないけれど、手触りがずっと続くことで得られる安心感は、歌集全体をを通してしか得られないものだと思います。

優しさをもってすべてに接すればすべてのものは優しさをもつ

著者：島楓果（しま・ふうか）
定価：1870円（本体1700円＋税）
仕様：164ページ、B6変型ハードカバー
装丁：名久井直子
ISBN：978-4-86732-008-2　C0092
プロフィール：1999年3月生まれ。富山県在住。
概要：「第１回あたらしい歌集選考会」で、木下龍也選となった著者による第一歌集。「百発百中」と唸らせた、日常への観察眼。本の裏側には金で箔押しされた一首が光る。