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上坂あゆ美『老人ホームで死ぬほどモテたい』

¥1,870 税込

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上坂あゆみさん『老人ホームで死ぬほどモテたい』

お父さんお元気ですかフィリピンの女の乳首は何色ですか

生きる犬は死んだライオンに勝つらしい わたし長生きのライオンになる

桜舞う森でピースで立ったまま散るな笑うな最終回かよ

一見シニカルで、ジョークみたいな語り口だけれど、実は深刻な出来事、追い詰められた心境である事も多い事に気が付きます。

吐瀉物にまみれた道を歩いてく おおきなおおきな犬の心で

今ここが世界の中心かのように泣く人がいて会議が止まる

ギリギリの状況でも、突飛な方法で茶化してしまうのは、上坂さんの明るさの才能なのかも知れないし、悲劇のヒロインになる事も許されないほど、世界が窮屈になっているのかも知れない。とも思う。
老人ホームに「死ぬ」という単語を付けてしまう笑えなさも、それまでを諦めてしまう諦念も、それをコミカルにしてしまう度量も含めて、しぶとく生きること、強さ、逞しさを貰える歌集…。(よ)



−−−
新鋭短歌シリーズ59
『老人ホームで死ぬほどモテたい』
上坂あゆ美
監修:東 直子

【5首】
母は鳥 姉には獅子と羽根がありわたしは刺青(タトゥー)がないという刺青(タトゥー)
風呂の水が凍らなくなり猫が啼き東京行きの切符を買った
故郷の母と重なりしメスライオン 深夜のナショナル・ジオグラフィック
沼津という街でxの値を求めていた頃会っていればな
シロナガスクジラのお腹でわたしたち溶けるのを待つみたいに始発

思わぬ場所から矢が飛んでくる
自分の魂を守りながら生きていくための短歌は、パンチ力抜群。絶望を嚙みしめたあとの諦念とおおらかさが同居している。
(東 直子)

【著者プロフィール】
上坂あゆ美(うえさか・あゆみ)
1991年8月2日、静岡県生まれ。東京都在住。
2017年から短歌をつくり始める。
銭湯、漫画、ファミレスが好きです。
Twitter:@aymusk


発行所:書肆侃侃房

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