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暮田真名『ふりょの星』

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暮田真名さんの待望の川柳句集『ふりょの星』。
吉田戦車さんの、ビビットでファンキーな表紙も素敵です。

はちゃめちゃなようで、内容、展開にはかなりの広がりがあってご紹介しきれないので、冒頭の連作
「OD寿司」からご紹介。


どうしたのそんなに寿司を転がして

寿司ひとつ握らずなにが銅鐸だ

寿司ですよ今はカミキリムシですが

「寿司は」転がされ弄ばれる何かのはけ口であり、銅鐸を銅鐸ならしめる初歩の初歩としての基本的な何かであり、いまはカミキリムシになったと訳知り顔で語る主体でもある。
どんなに読み込んでも、寿司に対して統一された世界観や、暮田さんの現実的な寿司観が提示される訳ではない。主体を持ち、失われ、あしらわれ、どこまでも解体され、流転して、位相を変えて、1つの連作の中に収められています。


音楽史上で繰り返される寿司

良い寿司は関節がよく曲がるんだ

寿司それは飼い慣らされたアルマジロ


寿司は歴史上の重大な要素でもあり、活きのいい素材でもあれば、物々しく定義される観察対象でもある。

「川柳を作るとき、私はさながら迷子センターのようです。 私のもとにやってきた言葉とすこしの時間だけお話して、送りだしてあげる。 誰もむかえにきていなくても。」
(あとがきより)

暮田さんにとって、おそらく、言葉には広大な可能性が合り、混沌としていて、自律したものでもある。どんなに解体されていても、独りでに旅立っていくという信頼もある様に感じました。

他にも、楽しい川柳がたくさんあります!
ヤバ!と、バイブスで読んでもすごく楽しいのですが


もしかして更迭されてゆくイルカ

セレモニー中に睫毛が落ちる音

かなしみと枯山水がこみ上げる


急にドラマチックな演出がされていたり、繊細で透明感のある光景があったり、涙と枯山水が対比されるような心象風景など、読み込んでも、かなりの仕掛けや展開があり、ドキドキが止まりません。

ミシンといえば聞こえはいいが

半分になる車体感覚

など、七七の句もかっこいいです!(よ)

−−−
川柳のビッグバン!
川柳アンソロジー『はじめまして現代川柳』(書肆侃侃房)でも最年少柳人として紹介された、Z世代のトップランナーによるネオ川柳。 言葉を限りなく自由に操り、読んだ者を骨抜きにする、魅惑の250句。

意味深な無意味な言葉の羅列。読み終わる頃には、言葉を食べてお寿司を読みたくなるに違いない。ーDr.ハインリッヒ(芸人)

川柳を作るとき、私はさながら迷子センターのようです。
私のもとにやってきた言葉とすこしの時間だけお話して、送りだしてあげる。
誰もむかえにきていなくても。ー「あとがき」より

〈収録句より〉
良い寿司は関節がよく曲がるんだ
いけにえにフリルがあって恥ずかしい
県道のかたちになった犬がくる
観覧車を建てては崩すあたたかさ
銀色の曜日感覚かっこいい
寵愛を受けて現像液のなか
ティーカッププードルにして救世主
賛意って子持ちししゃものことなのか
たてまつる永遠のつきゆび
未来はきっと火がついたプリクラ
コングラチュレーション 寝ない子 コングラチュレーション

❖目次
OD寿司
いけフリ
ネバーランドの残り湯
恋と筐体
霊柩車ほぐし
天地無用の子供たち
タイムパトロール
付録
永遠のつきゆび
もしもし、
この世のベッドルームミュージック

あとがき

暮田真名(くれだ・まな)
一九九七年生。
「川柳句会こんとん」主宰。「当たり」同人。
句集『補遺』『ぺら』。ほかに『当たり』(すべて私家版)。『はじめまして現代川柳』(書肆侃侃房)入集。

(左右社)

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