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【サイン本】平出奔『了解』

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2020年、短歌研究新人賞受賞の、平出奔さん第一歌集。

はいはいはい、って言ったのは私だったのにひどいことされたと思ってる

目を閉じて言えば本音であることを信じてくれるような気がした

このひとに愛されることはないんだと思うと少し気が楽だった

プロ野球はじまりますねとか言って目を合わせないようにしていた

他者や、語りかけるような歌は少なくないのだけれど、どどちらを向いても諦めや脱力、すかされてしまうような空虚感に満ちています。そこに悲しみがある感じもなくて、ディストピアのような感すらあるように思います。

かなしいなあどうしても僕はここにいる僕のことを考えなきゃならない

郵便受けに挟まったままの自動車税納付書は世界を彩って

信じるよ ウォーターサーバーの水のボタン押したらちょうどよく出てくる水

自身に関しても他人事のようであるし、事物に対しても、本当に彩っているのか?信じているのか?と、それ自体にも疑いが生まれてしまうような、ズレが独自の視点を生み出しています。
「了解」の連作は、長めの散文が断続的に収録されていて、ややスリリングであり、哀しくもあり。「あとがき」という連作など、トリッキーな作りも魅力の歌集。(よ)

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  だってですよ。
僕に見えるこの僕みたいな人生をあなたなら続けられたんですか

2020年短歌研究新人賞受賞作「Victim」を含む第一歌集。

【歌集より】
  「ひととおり、聞いた感じぃ
その人と縁を切らないのはもはや努力不足、ってことになるね……」
信じるよ ウォーターサーバーの水のボタン押したらちょうどよく出てくる水
曲線は未来へ伸びて、ねえ、アレクサ、何人の犠牲で済むか計算できる?
川の動画を見てる 動画が終わったら止まって、また流れていく川
それでいい。嘘には良いのもあるんだし、遠かったでしょう、ここまで

【著者プロフィール】
平出奔(ヒライデ・ホン)
1996年3月 福岡県大牟田市生まれ。
2018年6月 「塔」短歌会入会。
2020年7月 「Victim」により第63回短歌研究新人賞受賞。
現在、日本大学芸術学部文芸学科在学中。
「塔」ほか「えいしょ」同人、「半夏生の会」、「のど笛」同人。

(出版社:短歌研究社)

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