
【サイン本あり】榊原紘『koro』
¥2,310 税込
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第二回笹井宏之賞、『悪友』を刊行した榊原紘さんの第二歌集です。日常の中の鋭い描写やワードセンスの光る、親しみやすい第一歌集から印象の離れたような、シャープでクールな装丁。
栞文でも「宝剣の一行」と評されていた通り、鋭く、壮厳な世界観に心を奪われます。
眼の奥に錆びた秤が一つあり泣けばわずかに揺れる音する
銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す
カンヴァスに消失点を決めるとき製氷皿のようにしずかだ
八月のあかるい朝のすずしさは青い蜥蜴のように逃げゆく
それらはファンタジーや幻想や喩ではなく、直接的な感情と地続きであることも独自の手触りであるように感じました。
ペガサスはいつ飛び方を覚えるか 貯金をしようとは思ってる
指だけを繋ぎ隣で泥舟を見送っていた 星燃える夜
鋳型から心臓を抜きさびしげに熱砂の中でごめんと言えり
異床異夢 それでも足を春泥にとられて心から笑いあう
そして、全てが硬質で気高い世界に染められている訳ではなく、極めて日常に近い風景、織り込まれる詩的な飛躍が空想や、別の世界への経路に繋がっているようにも思います。
つまんないとはっきり言ってくれたよねフライ返しで食べるオムレツ
軽すぎるリュックじゃ走りづらいこと忘れて過ぎるすずらん通り
きみの家にきみを帰してレンタカーをレンタカー屋に返して夏は
知識や豊かなボキャブラリーで構成された表現が、どこか子ども心をくすぐるような親しみやすさ、知的な悪戯に見える面もあり…多様で引用し過ぎてしまいました!
冥土へと中双糖(ざらめ)を落とせ 誠意から別家したギア救い出すんだ
ぼろぼろと臓物(もつ)煮て思うこの国に雪にまつわる語の多きこと
角笛の音はふかふかと夜に刺さり、王より永く生く王の盾
栞文も、スタイリッシュでクール、この方から欲しかった!というような面々。一目惚れできるようでありながら、一筋縄ではいかない歌集。一首一首が濃厚で詰まった1冊です。
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眼の奥に錆びた秤が一つあり泣けばわずかに揺れる音する
『悪友』で熱烈な支持を集める著者の、無二の進化を遂げた渾身の第二歌集。
【栞文より】
「救われたくない。ゆるされたくない。そう何度も叫んでいる。(中略)できれば全て脱ぎ捨てたいのだ。そうすればふたたび穢れず生きていける」(江戸雪)
「榊原の美意識は現代短歌において実に独自性が高い。そしてその根底には、神秘への思慕がある」(黒瀬珂瀾)
「この作家の器の大きさに感嘆した。自在な言葉が相応な重さを持って宇宙の謎に拮抗している。人間が人間である悲苦から逃げることなく、現代人の知性によって真っ向から対峙している。(中略)怖るべし・怖るべし・怖るべし」(水原紫苑)
【収録歌より】
銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指輪を外す
百合のように俯き帽子脱ぐときに胸に迫りぬ破約の歴史
額縁を焼(く)べてきたかのような貌ゆっくり上げてただいまと言う
ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
ヘアバームのくらいにおいだ泣くのなら最初の一粒から見ていたい
【栞】
江戸雪「滅びの思考」
黒瀬珂瀾「かずかぎりなきあなたとわたし」
水原紫苑「宝剣の一行」
(書肆侃侃房)
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