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渡辺松男『寒気氾濫』

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現代短歌の重要な歌集を復刊、新装版として刊行する、
書肆侃侃房の〈現代短歌クラシックス〉シリーズ。

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【収録歌より】
橋として身をなげだしているものへ秋分の日の雲の影過ぐ
つくづくとメタフィジカルな寒卵閻浮提(えんぶだい)容れ卓上に澄む
キャベツのなかはどこへ行きてもキャベツにて人生のようにくらくらとする
背を丸め茂吉いずこを行くならん乳房(にゅうぼう)雲(うん)はくろぐろとくる
赤ん坊花びらのような声を呑みはじめての重き月を見にけり
樹は内に一千年後の樹を感じくすぐったくてならない春ぞ

【著者プロフィール】
渡辺松男(わたなべ・まつお)
一九五五年五月、群馬県伊勢崎市生まれ。前橋高校を経て東京大学文学部卒。
歌集に『寒気氾濫』『泡宇宙の蛙』『歩く仏像』『けやき少年』『〈空き部屋〉』『自転車の籠の豚』『蝶』『きなげつの魚』『雨る』。句集に『隕石』。
現代歌人協会賞、ながらみ現代短歌賞、寺山修司短歌賞、迢空賞を受賞。「歌林の会」会員。

(出版社:書肆侃侃房)

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