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柳原恵津子『水張田の季節』
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慧眼の研究者として、忙しい家族の一員として、そしてこの〈世界〉のさみしい人間として、柳原さんは日々の歌を刻印し続けている。――黒瀬珂瀾
研究者としての仕事と家庭を行き来しながら詠まれた、気鋭の著者による第一歌集。初期作品から現在まで、現代短歌社賞佳作となった連作「水張田(みはりだ)の季節」を含む344首を収録。
〈栞〉
染野太朗「サンダルと万緑」
樋口智子「春はまた、花を連れてくるから」
黒瀬珂瀾「忙しくって、寂しくて」
〈収録短歌より〉
生きているだけでふたたび夏は来て抜け殻に似た棚のサンダル
それぞれの臓腑に白く降る雪よわれには淡く父には深く
ラスボスとして死の影の差す午後にいっしんで書く勤務報告
おやすみ、と書斎へ向かうこの人も燃えさかる一点をめぐる星
夕凪の汀の喜怒をきらめかす十八度目の冬のむすめは
(左右社)
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